ヤン・ウェンリー Yang Wen-li(宇宙暦767〜800)
  • 自由惑星同盟軍最高の知将にして猛将。16歳の時交易商をしていた父ヤン・タイロンを失い無一文となる。彼の進学希望先は大学の歴史学科だったが、長引く戦争のため人文科学関係の学校、生徒に対する国家予算は削減される一方であり、保護者を失った彼には大学進学は無理であった。そのため彼は、「ただで歴史を学べる」士官学校戦史研究科に入学する。このように、ヤンは決して軍人志望ではなくたぶんに他動的な要素から軍人の道にすすんだのであった。
    士官学校を卒業して少尉に任官し統合作戦本部記録統計局に配属されるも「勤務ぶりが思わしくなく」前線に配置転換される。その、前線こそが「エル・ファシル星域」であった。
     宇宙暦788年、中尉に昇進したヤンを含むエル・ファシルの同盟軍は、数にして10倍に近い帝国軍に包囲され司令官アーサー・リンチ少将は「民間人を守る」という、およそ軍隊の唯一のいい意味での存在意義をかなぐり捨て逃亡を図ってしまった。それでもリンチはヤン・ウェンリー中尉という若い士官に民間人脱出計画を託していた。ヤンは、パニック、恐慌に陥った民間人をなだめすかし時を待った。すなわちリンチ以下の軍人が民間人を見捨てて逃亡を図るその時を。帝国軍はエル・ファシルから同盟軍が出てくるのを待ち受けていた。リンチ以下の同盟軍は捕虜となったが、ヤン・ウェンリー中尉に率いられた民間人船団はこれを利して安全地帯に逃げおおせることができた。軍部はこのヤンの功績に最大級の褒賞をもってこたえた。ヤン・ウェンリー中尉は21歳の若さにして少佐に昇進し、ここからヤン・ウェンリーの比類なき偉大な用兵家としての軌跡が始まるのだ。
     彼のこの功績は「所詮少佐止まりの男が21で少佐になっちまったら残りの人生がさぞつまらんだろうよ」などとさえいわれたが、その後ヤンは戦場に出ると数回に一回は奇計を立て中佐、大佐と順調に昇進していく。基本的に幕僚肌の男で巡航艦や戦艦の艦長と行った職責は経験しなかったようだ。28歳の時には准将、つまり将官の最下級に昇進し第2艦隊次席幕僚の職責にあった時原作第1巻のアスターテ星域の会戦を迎えることとなる。
     軍人としての才能、実績はひとまずおくとしてヤン・ウェンリーという男を特色づける第1のものは、「軍人なのに戦争が嫌いで、軍人などになりたくなかったのに比類なき速度で昇進を重ねる」という点に尽きるであろう。彼は、歴史家を志したものとして(軍人になって以後も過去の文献をあたり、歴史に対する素養と思索を深めることを怠らずいつか来るかもしれない「歴史家になる日」に備えていた)権力がもたらす流血、社会的不公正、戦争で有望な若者が死んでゆくのに政治家や軍需産業の経営者およびその息子達はのうのうと戦争を賛美し犠牲を美化していることを耐えがたく思っていた。過去の歴史から彼は流血と溢れる死の底辺に、「戦争で決して死なない者」達が利益と権益をあさっていることを知り抜いており、それは「悪逆非道な専制国家」たる銀河帝国と戦争を続ける自由と民主主義の国自由惑星同盟においても例外ではないことを苦々しさをもって把握していたのである。しかし、彼は民主共和制の擁護者であった。「最悪の民主制でも最良の専制政治に勝る」が彼の持論のひとつであり、その言葉どおりカイザー・ラインハルトによる「最良の専制」が自由惑星同盟を滅ぼし全宇宙を覆いつくさんとする中でたとえささやかな、わずかで小さなものであれ民主制の灯火を後世に残すために、あれほど嫌った流血を賭してそれを成さんとしたのである。
     彼のこの意志は被保護者だったユリアン・ミンツらイゼルローン革命軍に引き継がれ、カイザー・ラインハルトと戦って彼から譲歩を引き出すのに成功した。全人類400億人の大半はカイザー・ラインハルトと彼の興したローエングラム王朝の支配下に入るも、旧自由惑星同盟首都星ハイネセンを擁するバーラト星系は内政自治権を獲得し民主共和制の手の中に残ったのである。
     余談を言えば民主共和制の勢力を勝たせず、比類なき偉大な専制君主の軍事的・政治的才能と、手続きと政策の決定にしばしば時間がかかり迂遠な民主共和制国家を対比させ、専制国家とそれを率いる黄金の皇帝に民主国家を滅ぼさせて、民主主義への痛烈な警告と警鐘を鳴らしたのは、なんとも意義深い、味わいある設定ではないだろうか。アメリカ人あたりが書いたらこうはなるまい、と思わせる。
     容姿について言えば「見る人によってはハンサムに見えないこともない」「一向に芽の出ない若い学者風の容貌」「軍服を着ているからこそかろうじて軍人らしく見える」容姿。私生活については完璧な勤勉の徒というわけではなく、ユリアン・ミンツが家事を取り仕切るまではかなり「小汚い」独身用官舎で暮らしていたらしい。年金を早くもらって歴史の研究に専念するのが夢であった。
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