• 宇宙暦1年:太陽系第3惑星地球からアルデバラン系第2惑星テオリアに政治的中枢を移した人類は銀河連邦の成立と西暦の廃止及び宇宙暦への改元を宣言する。以後、銀河系の深奥部へ向けての開拓と人類領域の拡張が始まる。

    宇宙暦106年:銀河連邦軍のウッド提督、M.シュフラン提督らの活躍により辺境開発の大いなる障害となっていた宇宙海賊(スペース・パイレーツ)の一掃に成功する。さらなる開拓の進展。

    宇宙暦3世紀後半:繁栄を続けた銀河連邦の社会に、深刻な経済的不況、精神的退廃、オカルティズムの流行、検挙率の低下と凶悪犯罪の激増、警察・軍・官吏の汚職がはびこり宇宙海賊の活動も復活して「中世的停滞」期に入ったといわれる。

    宇宙暦268年:ルドルフ・フォン・ゴールデンバウム-Rudolf von Goldenbaum-,軍人の家庭に生まれる。

    宇宙暦289年:ルドルフ、連邦軍士官学校を首席で卒業。宇宙海賊のメインストリートと称されるリゲル方面へ転出される。勇躍して乗り込んだ彼は苛烈な取締りによって「裁判を望む」海賊どもを宇宙船ごと焼き払い一部の批判と、停滞した社会に嫌気が差していた人々の大部分から喝采を浴びる。

    宇宙暦296年:28歳にして銀河連邦軍少将にまで上り詰めたルドルフ、この年軍籍を退き政界に転じる。「国家革新同盟」の若きリーダーとして熱狂的な支持、少数の勇気と良識ある批判、そして退廃的な無関心が交錯する中で勢力を伸ばすことに成功し、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウム、首相に選出される。さらに彼は、憲法で兼任禁止と明記されていないのを利用して国家元首をも兼ねた。本来この両職は不文律によって兼任を禁止されてきたが、それがひとつの人格に統合されたとき恐るべき化学反応が生じた。もはや、彼の権力を掣肘しうるものはなくルドルフは「終身執政官」と自らを称するに至る。

    宇宙暦310年(=帝国暦1年):ルドルフ・フォン・ゴールデンバウム、自らを「神聖にして不可侵なる銀河帝国皇帝」と称し戴冠。同時に宇宙暦を廃し、帝国暦を発布する。ここに銀河連邦は崩壊し銀河帝国ゴールデンバウム王朝が成立した。ルドルフは皇室を支える貴族階級を作るため優秀な部下を選んでその地位に据えた。しかしその全員が白人で、しかも古ゲルマン風の姓を与えられたのは「ルドルフの知的衰弱を示すものではなかったろうか?」
    ・・・・・・ともかくルドルフの戴冠には、大多数の熱狂と、少数の、歴史に学び得なかったことを悔いる人々が入り乱れる中で行われたのである。ルドルフ戴冠の日、共和派の政治家ハッサン・エル・サイドはこう日記に記している。
    「ルドルフ万歳を叫ぶ声が私の部屋にも聞こえてくる・・・・・・しかし彼らが死刑執行人に万歳を叫んだことを理解するのにどれほどの時間が必要だろうか」
     ルドルフの登場により、時代をおおっていた弊害は一掃された。ルドルフの強力なリーダーシップのもと、過酷なまでに厳格な警察活動により凶悪犯罪は激減し、ルドルフの設けた基準によってではあったが「洗練の度を越して不健全な」娯楽が姿を消した。しかし、絶対的権力を手中にし自己神格化を推し進めるルドルフが民衆に鉄槌を振り下ろす日は近づいていたのだ。

    帝国暦9年:ルドルフの信念―「宇宙の摂理は優勝劣敗、人類もまた例外ではありえない。余が望むのは人類の永遠の繁栄である。異常者が一定以上にわたって増えた社会は活力を失って滅亡する」―に基づき「劣悪遺伝子排除法」発布。これは身体障害者、社会的弱者、国家に反逆の意を唱えるものを取り締まり、断種を強制し時に死を与える法律で、これはいまだ存続していた議会の共和派から弾劾を受けたが、ルドルフはこれに対して議会の永久解散を持って答えた。ここに銀河連邦の民主共和政は名実ともに完全に死滅した。

    帝国暦42年:「鋼鉄の巨人」「大帝」「雷帝」と称されたルドルフ・フォン・ゴールデンバウム崩御。帝国各地で共和主義者による反乱が勃発するも、第2代皇帝ジギスムントらにより完全に鎮圧される。40億人が農奴階級に落とされ共和主義者にとっての長い長い冬の時代が始まった。

    帝国暦164年:アルタイル星系で共和主義者の子孫として重労働に従事させられていた青年アーレ・ハイネセンら40万余の人々、その職場たる酷寒の惑星特有の天然の巨大ドライアイスを使った宇宙船で帝国領からの脱出を図る。ひとまずある惑星まで離脱し身を潜めドライアイスの船に変わる数十隻の恒星間宇宙船を建造すると帝国軍の激しい追撃を振り切り、それまで人類が到達していない深宇宙へと航海を続けた。後世、「長征1万光年」と称される長い長い旅路のそれは始まりであった。

    帝国暦218年(=宇宙暦527年):「調整1万光年」の終結。バーラト星系第4惑星を首都とする「自由惑星同盟」の成立と宇宙暦の復活が宣言された。そこには、自分たちこそが銀河連邦の正当なる後継者であるとの誇りがあった。ルドルフごときは民主制の卑劣な裏切り者に過ぎない。
     同盟初代の市民は16万人余、半世紀に及ぶ長征で過半数の同士とアーレ・ハイネセンを失っていた。同盟首都星たるバーラト星系第4惑星は心からの敬意をこめて「ハイネセン」と命名された。
    宇宙暦640年−帝国暦331年:「ダゴン星域の会戦」。自由惑星同盟と銀河帝国の初めての接触は戦艦同士の遭遇戦であった。帝国軍は敗れたが、本国に連絡を送り1世紀以上前に逃亡を図った農奴がいたことを突き止める。野垂れ死にもせず生きていたのだ!
     帝国軍は皇帝の息子ヘルベルト大公を総司令官とする5万2000隻、440万の大軍で同盟に侵攻するが、半数の兵力の同盟軍に完敗を喫した。帝国軍の補給線が長すぎたこと、地理に極端に不案内だったこと、司令官が無能だったこと、同盟軍総司令官のリン・パオ中将、参謀長ユースフ・トパロウル中将らが優秀だったことなどがその原因として挙げられる。ここから、1世紀半にわたる両勢力の血で血を洗う抗争劇が始まるのである。

    宇宙暦682年−帝国暦373年:帝国と同盟の中間地点に帝国自治領「フェザーンラント」成立。同盟との交易が認められ、その経済力によって無視できない存在となる。その設立にあたっての功労者はもはや病み衰えた地球出身の大商人レオポルト・ラープであったが、それが何を意味していたかは1世来以上の時の経過をもって始めて白日の元にさらされることになろう。

    宇宙暦730年:自由惑星同盟軍士官学校は、後に「730年マフィア」と呼ばれることになる卒業生を送り出す。ブルース・アッシュビー、ファン・チューリン、フレデリック・ジャスパー、ウォリス・ウォーリック、ヴィットリオ・ディ・ベルティーニ、アルフレッド・ローザス、ジョン・ドリンカー・コープらで彼らで後のブルース・アッシュビーの司令部幕僚のほとんどを占め、数で勝る帝国軍に対抗するのに大いに功があり、列記した全員が元帥まで昇進している。

    宇宙暦738年:ファイアザード星域会戦

    宇宙歴745年:35歳にして自由惑星同盟軍宇宙艦隊司令長官に就任したブルース・アッシュビー大将を総司令官に第2次ティアマト星域会戦が行われる。総参謀長ローザス中将、第4艦隊司令官ジャスパー中将、第5艦隊司令官ウォーリック中将、第8艦隊司令官ファン中将、第9艦隊司令官ベルティーニ中将、第11艦隊司令官コープ中将の陣容のもと戦われたこの戦いは、ベルティーニと総司令官たるアッシュビーを失いながらも同盟軍の大勝に終わる。アッシュビーは死後元帥号を送られ、同盟軍史上、ヤン・ウェンリーが32歳で元帥の階級を得るまでの最年少の元帥となった。ベルティーニに元帥号が送られたのは死後6年経った751年であった。

    宇宙歴767年:ヤン・ウェンリー、交易商の父ヤン・タイロンと「評判の美人」カトリーヌ・ルクレール・ヤンとの第一子として4月4日に誕生。

    帝国歴467年−宇宙歴776年:ラインハルト・フォン・ミューゼル、「帝国騎士」の称号を持つ下級貴族の父セバスティアンと母クラリベル、姉アンネローゼの第二子として誕生。

    宇宙暦783年:ヤンの父タイロン死去。(母カトリーヌ・ルクレールは幼少期に死去)。ヤン・ウェンリー、学資に困窮し同盟軍士官学校戦史研究科に3300人中1000番台の平凡な成績で合格、入学する。

    宇宙暦786年−帝国暦477年:ラインハルト、父と姉(母クラリベルは貴族の過失による事故死でこれもまたごく幼少期に失っていた。この事故は貴族の保身と権威により公表されもせず、保証金すら一銭も支払われなかった。ラインハルトの父セバスティアンのアルコール依存症と無気力はここから始まったと思われる)と移り住んだ先で、彼の生涯を通じて唯一の親友、ジークフリード・キルヒアイスと出会う。
     しかし同じ年、思慕し、母を失ってからは母性そのものだった美しくやさしい姉アンネローゼが、まさにその美質の故に皇帝フリードリヒ4世の後宮に納められる。この事件を契機にラインハルトはゴールデンバウム王朝に対する何よりも正当な憎悪を深く心に刻む。そして姉を取り戻すために軍人になる決意をし親友キルヒアイスとともに軍幼年学校に入学する。この日から二人の、人類史を一変させる黄金の獅子と赤毛の優美な才能の宇宙を手に入れるための戦いがはじまった。

    宇宙暦787年:ヤン・ウェンリー、士官学校卒業。少尉に任官。統合作戦本部記録統計室に配属。
    宇宙暦788年:ヤン・ウェンリー、中尉に昇進、エル・ファシル星域勤務。数百隻の防衛力しか持たぬこの星域に帝国軍は2000隻の艦艇で侵攻、恐慌をきたしたエル・ファシル駐留軍司令官アーサー・リンチ少将は、軍人のおよそ唯一の積極的な存在意義ー武器を持たぬ民衆を守護すること―をかなぐり捨て部下を連れて逃亡を図る。しかし、民間人に対する脱出計画を半ば自暴自棄になって託した新米中尉ヤン・ウェンリーによってその逃亡は帝国軍の目をひきつける絶好のおとりとされ捕虜となる。ヤンは見事に300万の市民を後方に脱出させ、大尉、少佐への連続昇進を果たす。

    宇宙暦791年−帝国暦482年:ラインハルトとキルヒアイス、幼年学校を卒業。士官学校には進まず軍人として任官する。ラインハルトは本来准尉として任官すべきところを皇帝フリードリヒ4世に寵愛される姉アンネローゼらの影響で少尉として任官、キルヒアイスは当然規則通り准尉として任官し、惑星カプチェラカβVで初陣を飾る。

    宇宙暦792年−帝国暦483年:ヤンとラインハルト、キルヒアイス第5次イゼルローン要塞攻防戦に出征。

    宇宙暦794年:ヤン・ウェンリー、戦争孤児を軍人の家庭で養育するトラバース法(引き取った子供が将来軍人になれば給付された養育費の返還が不要になる)によって12歳の少年ユリアン・ミンツの保護者となる。この年ヤンは大佐、第6次イゼルローン要塞攻防戦時総司令部作戦幕僚。この攻防戦を同盟軍の敗北に終わる。
     ラインハルトはこの年准将、ヴァンフリート星域の会戦に功あり、少将に昇進。同年10月の第6次イゼルローン要塞攻防戦を小艦隊を率いて戦う。
    宇宙暦795年−帝国暦486年:中将となったラインハルト、第3次ティアマト星域の会戦で同盟軍第11艦隊を壊滅させ、司令官ウィレム・ホーランド中将を戦死させる。この功により大将に昇進。
     同年九月、レグニッツァ上空遭遇戦。敵は同盟軍第2艦隊で司令官パエッタ中将の部下に第2艦隊次席幕僚ヤン・ウェンリー准将がいた。  続いて第4次ティアマト星域会戦。ラインハルトの行動が勝敗の帰趨を決した。

    宇宙暦796年−帝国暦487年:ラインハルト・フォン・ミューゼル、家系の途絶えていたローエングラム伯爵家を継ぎ名をラインハルト・フォン・ローエングラム−Reinhard von Lohengramm−と改めるにいたる。
     同年2月、上級大将として2万隻の艦艇を率いアスターテにおいて4万隻の同盟軍と対峙する・・・・・このときヤンは第2艦隊次席幕僚としてこの戦いに望もうとしていた・・・・・・
     ・・・・・・以上が、原作小説第1巻冒頭部にいたるまでの人類史、ヤンとラインハルトの個人的事跡である。ここから、ラインハルトとヤン、後世において神話的なまでの名声を得る二人の若き英雄の短くもあまりに灼熱した時代が始まるのである・・・・・・
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